「健診で緑内障の疑いと言われた。目のことなのに、いびきと関係あるの?」
緑内障は視神経が少しずつ傷み、放置すると失明にもつながる病気です。眼圧の高さが主な要因として知られていますが、近年、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が緑内障のリスクを高めることが複数の研究で報告されています。
いびきを指摘される、日中に強い眠気がある——そんな方は、目の健康のためにも無呼吸の可能性を知っておく価値があります。この記事では、その意外な関係と対策をわかりやすく整理します。
そもそも「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間に空気の通り道(気道)がふさがって、呼吸が止まる・浅くなることをくり返す病気です。多くは大きないびきを伴いますが、本人は眠っているため気づきにくく、一人暮らしや寝室が別だと指摘してくれる人もいません。
いびきを指摘されたことがある、あるいは日中の強い眠気があるなら、この病気が背景にあるかもしれません。
次のような特徴のある人は、いびき・睡眠時無呼吸を起こしやすいとされています。あくまで傾向であり、当てはまらなくても起こることがあります。
- 太っている・首が短く太い
- あごが小さい・後退している
- 扁桃腺が大きい
- 鼻づまりがあり口呼吸になりやすい
- 日常的にお酒を飲む・喫煙している
- 加齢、閉経後の女性
そもそも緑内障はなぜ起こるのか
緑内障は「視神経が傷つき、見える範囲(視野)が少しずつ欠けていく」病気です。主な要因は一つではありません。
- 眼圧の高さ:目の中の圧力が視神経を圧迫する(最大の要因とされる)
- 視神経の血流不足:眼圧が正常でも、血流が乏しいと傷みやすい(正常眼圧緑内障)
- 加齢・家族歴:年齢とともに増え、血縁者に緑内障がいると起こりやすい
- 強度近視:近視が強い人は視神経が弱くなりやすいとされる
注目したいのは「血流不足」です。日本人に多い正常眼圧緑内障は、眼圧が高くないのに視神経が傷むタイプで、視神経への血流や酸素の不足が関わると考えられています。ここに睡眠時無呼吸が関係してきます。
なぜ睡眠時無呼吸で緑内障のリスクが上がるのか
そのメカニズムは、主に夜間に起こる2つの変化で説明されています。
① 夜間の低酸素で視神経の血流・酸素が不足する
無呼吸で呼吸が止まると血液中の酸素濃度が下がります。酸素に敏感な視神経は、くり返す低酸素の影響を受けやすく、傷みやすくなるとされています。
② 無呼吸後の血圧・眼圧の急変動
止まった呼吸が再開するたびに血圧が急上昇し、血管に負担がかかります。夜間の血圧や眼圧が大きく変動することも、視神経へのダメージにつながると考えられています。
こうした背景から、睡眠時無呼吸のある人は緑内障を合併しやすいことが複数の研究で示されています。「眼圧を下げる点眼をしても進行する」正常眼圧緑内障の一部に、無呼吸が隠れている可能性も指摘されています。
こんな場合は睡眠時無呼吸を疑う
次のような点が複数当てはまる場合、いびき・睡眠時無呼吸が背景にある可能性があります。
- いびきを指摘される/大きないびきの自覚がある
- 眠っているときに呼吸が止まっていると言われたことがある
- 日中に強い眠気・居眠りがある
- 朝起きたとき頭が痛い・口やのどがカラカラに乾く
- 健診で「視神経乳頭陥凹」「緑内障の疑い」を指摘された
- 正常眼圧なのに緑内障が進行していると言われた
- 肥満気味・首が短く太いと言われる
とくに「いびき・日中の眠気」と「緑内障(疑い含む)」が重なる場合は、目の治療と並行して無呼吸の有無を確認する価値があります。
他の原因と見分け方
緑内障にはさまざまな要因があります。無呼吸以外の代表的なものも押さえておきましょう。
| 考えられる他の原因 | 特徴・ヒント |
|---|---|
| 眼圧が高いタイプ | 点眼などで眼圧を下げる治療が中心。まず眼科で精密検査を |
| 加齢・家族歴 | 40歳以上、血縁に緑内障がいる人は定期的な眼科検診を |
| 強度近視 | 近視が強い人はリスクが高め。眼科で経過観察を |
| ステロイド薬の影響 | 一部の薬で眼圧が上がることがある。使用中の薬は医師に相談 |
| 他の目の病気 | ぶどう膜炎などが背景のことも。眼科での鑑別が必要 |
緑内障そのものの診断・治療は必ず眼科で行います。そのうえで、いびきや眠気があれば無呼吸の確認も加える、という考え方が安全です。
今日からできる対策・セルフケア
緑内障の治療は眼科が中心ですが、無呼吸が背景にある場合、その改善は目にも全身にもプラスに働きます。共通して役立つセルフケアです。
横向きで寝て、いびき・無呼吸を減らす
仰向けは気道がふさがりやすい姿勢。横向き寝は無呼吸を減らし、夜間の低酸素をやわらげることにつながります(うつ伏せは眼圧を上げることがあるため避けましょう)。
体重を見直す
肥満は無呼吸の最大の要因の一つ。減量は気道の状態を改善し、全身の血流にもよい影響が期待できます。
お酒・寝る前の飲酒を控える
アルコールは気道の筋肉をゆるめて無呼吸を悪化させます。就寝前の飲酒はひかえめに。
眼科の治療・検診は必ず継続する
セルフケアは補助です。点眼や定期検診など、眼科の指示は必ず続けてください。緑内障で一度欠けた視野は元に戻りません。
睡眠時無呼吸かも?検査と治療の流れ
セルフケアで改善しない、いびきや無呼吸の指摘がある場合は、検査で調べることができます。
- セルフチェック:まずは無料のセルフチェックやいびき度チェックで、リスクの目安を確認します。
- 自宅の簡易検査:疑わしければ、指や鼻にセンサーを付けて一晩眠るだけの簡易検査(保険適用・自宅でできる)を受けます。
- 精密検査(必要な場合):さらに詳しく調べる場合は、一泊の精密検査(PSG)を行うこともあります。
- 治療:重症度に応じてCPAP(鼻マスクで気道を広げる)やマウスピース、生活改善などを選びます。
2026年6月の改定で、CPAPの保険適用基準が緩和され、以前より受けやすくなりました。検査も自宅でできる簡易検査から始められるため、ハードルは高くありません。詳しくはCPAPとは?仕組み・効果・費用、治療全体はいびきの治し方 完全ガイドにまとめています。
受診の目安・何科に行けばいい?
緑内障の診断・治療は眼科で行います。そのうえで、いびきや日中の眠気があり無呼吸が疑われる場合は、睡眠外来・呼吸器内科・耳鼻咽喉科で睡眠時無呼吸の検査を受けられます。どちらから始めるか迷うときは、まずセルフチェックで無呼吸のリスクを確認すると整理しやすくなります。
放っておくとどうなる?
緑内障は、一度欠けた視野が回復しないのが怖い点です。自覚症状が出にくく、気づいたときには進んでいることも少なくありません。背景に睡眠時無呼吸があれば、目だけでなく高血圧・心疾患・脳卒中などのリスクにも関わります。「目は眼科、いびきは別」と切り離さず、両面から確認することが将来の視力を守ることにつながります。
睡眠時無呼吸を放置した場合に高まるとされる主なリスクには、次のようなものがあります。
- 高血圧(とくに薬が効きにくい治療抵抗性高血圧)
- 心疾患・不整脈(心房細動・心不全・夜間の負担)
- 脳卒中のリスク上昇
- 糖尿病・血糖コントロールの悪化
- 日中の眠気による事故(居眠り運転など)
まとめ
緑内障は眼圧だけでなく、視神経の血流不足が関わるタイプ(正常眼圧緑内障)が日本人に多く、そこに睡眠時無呼吸による夜間の低酸素・血圧変動が影響しうることが報告されています。いびきや日中の眠気を伴う緑内障・その疑いがある方は、眼科の治療を続けつつ、一度セルフチェックで無呼吸の可能性を確認してみましょう。
Q. 緑内障と睡眠時無呼吸は関係ありますか?
関係が報告されています。無呼吸による夜間のくり返す低酸素や、呼吸再開時の血圧変動が視神経の血流・状態に影響し、緑内障(とくに正常眼圧緑内障)のリスクを高めるとされています。ただし緑内障の主因は眼圧など他にもあり、診断は眼科で行います。
Q. 眼圧が正常なのに緑内障と言われました。無呼吸が原因ですか?
正常眼圧緑内障は日本人に多く、視神経への血流不足が関わると考えられています。その一因として睡眠時無呼吸が指摘されることがありますが、原因は人によりさまざまです。いびきや日中の眠気を伴うなら、無呼吸の確認も検討する価値があります。
Q. 無呼吸を治療すると緑内障は治りますか?
緑内障で欠けた視野は元には戻らず、無呼吸の治療が緑内障そのものを治すわけではありません。ただし無呼吸の改善は夜間の低酸素・血圧変動をやわらげ、全身の健康にもよい影響が期待できます。緑内障の治療は眼科で継続してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。同じ症状でも他の病気が背景にあることがあり、原因や必要な検査は人により異なります。気になる症状が続く場合は自己判断せず、医療機関を受診してください。記載の数値・割合は各種公開情報にもとづく目安です。
